たーたん(西炯子)あらすじネタバレ試し読み!

「たーたん」(西炯子)2話

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第2話

 

親子の間柄にも、何かしらかくしごとの一つや二つはあるものです。

 

「あっ、またシャツを!裏返しのまま洗濯機入れてるー。」

 

反抗期の娘、鈴、15歳です。

 

「そーかー?」

 

目も合わせずしらばっくれる俺、敦、43歳です。

 

「たたむとき表に返さなきゃなんないから面倒なんだっていつも言ってるでしょ。」

 

「でもさー、テレビで言ってたぞ。裏返しで洗った方が表が痛まないって。」

 

反抗する父親に娘が更に反抗する。

 

「うるさい。たたむのは私なんだよ、ちゃんとして。」

 

「・・・「うるさい」・・・親に・・・」

 

「たーたん、ホントに15年も子育てしてきたの?ホント何やってもちゃんとできないんだから。」

 

「育てたからおまえがこうして生きてるんだろが。」

 

育てましたとも。

 

人殺しちゃった服役中の友人に代わって。

 

「おまえだって俺の言うこと聞かないじゃないか。」

 

「何がよ。」

 

「パンツ見えてっからスカート長くしろって――」

 

洗濯ものを干す鈴の手が止まる。

 

「赤ん坊の時それ以上のものを見ておきながらまだパンツも見たいと。男親ってケモノね。」

 

「・・・おまえ、学校でもそういうこと言ってんのか。」

 

「言うわけないでしょ、バカじゃないの。私ちゃんとしてんだよ、誰かさんに似ず。」

 

言うだけ言って、鈴は洗濯物を干し終えると家を飛び出していった。

 

その後姿にチラチラのぞくスカートの下を気にしつつ敦は返した。

 

「悪かったな、こんな親で。」

 

友人があと一年で出所するのです。

 

そして・・・子育てに青春をささげた俺は・・・童貞なのです。

 

まあ・・・ありますよ。

 

かくしごとの一つや二つ。

 

「おはよー。」

 

「はよーっす。」

 

「今年もきれいだねえ、桜。」

 

「そうですねえ。」

 

基本外に出る仕事の敦の仕事は季節を感じることが多い。

 

「うあー、今日、俺の地域多いな〜〜」

 

敦の背後で同僚の井上が声をあげた。

 

「多いわ〜〜〜」

 

敦はその声にどうしても黙っておくことができなかった。

 

「いいよ、俺終わったらそっち回るわ。」

 

「マジっスか!助かるっス!」

 

井上は待ってましたと言わんばかりに喜んだ。

 

そこに割って入ったのは妹尾さん。

 

「井上さんは井上さんで頑張ってください。」

 

「え。」

 

「上田さんだって今日は多いんですから。」

 

井上の目論見は妹尾にはお見通しだったようだ。

 

しかし妹尾が助け舟を出したにもかかわらず敦は言った。

 

「や、いいんだよ、妹尾さん。そうすりゃみんな定時であがれるし。」

 

表情を変えずに敦を見つめ、やがて妹尾はあきらめた。

 

「・・・そうですか。上田さんがいいならそれで。」

 

妹尾が去った後、井上は愚痴気味につぶやいた。

 

「妹尾さんこういうの見逃さないよなあ。学級委員かっっの。」

 

「まじめなんだろ。」

 

「ひょっとして上田さんのタイプ?」

 

「え?や別に。」

 

どーせ俺なんか相手にしねーし。

 

しかし妹尾に見透かされたことで井上は少し反省したようだ。

 

「俺やっぱ自分でがんばるっス。」

 

「いいよ、手伝うよ。」

 

「・・・いいっスか。」

 

「ハイハイ。」

 

どこまでもお人よしな敦である。

 

その様子を眺めながら妹尾は思う。

 

(人がよすぎる。イラつくわ・・・。)

 

「妹尾さーん、おっはよーございまあーす。」

 

そこにもう一人妹尾と相いれなさげな人物がやってきた。

 

新人バイトの片岡だ。

 

「あなた朝からだったっけ?」

 

「私、家事手伝いですることないし、フルで入れるんですう〜〜〜」

 

体を若干くねらせて可愛いポーズをとる片岡。

 

周りの男性たちはかわいいかわいいとデレデレ見ている。

 

しかし妹尾には関係ない。

 

「そうだったわね。じゃ業務始めるから。」

 

そしてデレデレしている男たちにも釘をさす。

 

「みなさん、業務始まってますから。」

 

「妹尾さんてー、この営業所の中で付き合ってる人とかいるんですかあー?」

 

「いないけど何か?」

 

んふ

 

「や、結構ここいい人いるからなーと、思って〜〜」

 

片岡は首を傾げながらにこっと微笑んだ。

 

「ここは職場よ。」

 

「え〜〜もったいな〜い。」

 

イイ人、とは俺のことかとさや当てする同僚たちに今度は敦が声をかける。

 

「ハイハイ出発の時間だよ。」

 

まったくみんな。ちょっとかわいい子と見ると・・・ま、うちの鈴にはちょっと及ばないくらいかな。

 

その鈴を配達中に見かけた井上、営業所に戻ってきた敦に声をかけてきた。

 

「上田さーん、今日ありがとーございましたあ。おかげで助かったっス!」

 

車のドアを閉めながら敦も笑顔で返す。

 

「よかったね。」

 

「今日、南中配達あったんスけどお、娘さん見ましたよ〜〜すんげーかわいくなってるじゃないスか〜〜!しばらく見ないとあの年頃の女の子は見違えるっスよねえ。もーすっかり女らしくなっちゃって!」

 

・・・・
・・・・
「・・・ちゃって。・・・で、なんだ。」

 

敦の顔がみるみるこわばっていく。

 

井上がはっと思い出す間もなく敦は井上の襟をつかんで怒鳴りだした。

 

「井上、おまえうちの娘を狙ってるんじゃないだろうな!え!?娘のこといやらしい目で見たらただじゃおかんぞ、おい!」

 

「や、別に。そ いや。」

 

「上田さん、落ち着いて。」

 

同僚の制止に我に返った敦。

 

はっとしてそそくさと退散していった。

 

「ご、ごめん、つい・・・」

 

「そ、そうだった・・・上田さん娘さんのこととなると人が変わるんだった。」

 

「そうなんだよなあ、そろそろお年頃ってやつだからなあ。心配でたまらんのだろ。」

 

(そう。心配だ。いつまでもおむつしたチビでいればいいものを・・・)

 

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「ただいまあー。おなかすいたろ、すぐメシに・・・」

 

そういいながら帰ってきた敦を待ち受けていたもの、振り返った鈴は化粧の真っ最中だった。

 

「おかえり」

 

はうっ、きゅん!

 

びっくりしすぎて敦は固まって声もだせない。

 

「あーあ、何してんのよー。買い物おっことしちゃって・・・」

 

呆れて敦の落とした買い物袋を拾い上げる鈴の胸元には胸の谷間がくっきりと。

 

さらに衝撃を受ける敦。

 

娘の谷間、そして床に広げられた雑誌には"男子のハートをGET!春のモテメイク"などと刺激的な文字が並んでいる。

 

「・・・・なんだこの雑誌は!!」

 

「マイちゃんに借りた。」

 

「こ、こんなものを読むのは・・・まだ早い!」

 

「え?こんなの小学生でも読んでるよ?」

 

「そ、そういえばおまえ最近帰りが遅いときがあるな・・・」

 

「部活だよ。そのあと友達と話とかしたりするしさ。」

 

(友達・・・その友達の中に・・・まさか・・・男もいるのか?

 

そいつらと何をしてるんだ・・・?)

 

敦の妄想は果てしなく考えたくない方向に走っていく。

 

「そーゆーとこから不良化していくんだ!

 

これから門限六時!!

 

毎日六時に家に電話するから!」

 

過激に反応する敦に当然鈴はブーイング。

 

「え?何それ!?」

 

「それからな、スカートの丈は元に戻せ!髪型をいじっちゃいかん!アクセサリーや化粧も禁止!とにかく・・・とにかく・・・(かわいくなることは)すべて禁止!」

 

井上の事があったせいか敦は鈴を過剰に縛ろうとするが鈴も当然黙っちゃいない。

 

「そんなの横暴だよ〜」

 

「親には子供を監督する責任がある!」

 

「私、もう子供じゃないし!」

 

「中学生は子供だ!」

 

「ほっといてよ!私もう自分でいろいろできるし!私は・・・

 

いつか結婚して出ていくんだからね!いつまでもたーたんの娘じゃないんだから!」

 

そこまで言われて敦は完全に打ちのめされてしまった。

 

(・・・そりゃ、最初からおまえは、俺の娘ではないけれど・・・)

 

それはもちろん言えない言葉だった。

 

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翌朝、鈴は敦を起こさないようにそっと家を抜け出した。

 

友達5人と遊ぶためだ。

 

映画館行ってファストフードにゲーセンに、カラオケボックスで騒いで楽しいひと時。

 

「何、鈴ちゃん、今日超かわいいんだけど。男子ひとりじめ狙ってる?」

 

「それがさー、たーたんがいろいろうるさくてさー。日曜くらいハジけよーと思って。」

 

「そーなんだー、うるさいよね、親ー。」

 

女友達は同意してくれるが、川畑の反応は違った。

 

「上田が最近チャラついてっからじゃねーの?親父さんがうるせーのって。今日もなんかハデだし。」

 

鈴はちょっと寂しい気持ちになった。

 

「私の勝手だし。川畑こそきのう部活フケて遊んでたんでしょ?」

 

「やめるし。かんけーねーわ。」

 

「続けなよ、サッカー。カンタンにやめちゃもったいないよ。Jリーガー目指して小3からがんばってきたんでしょ?」

 

「続けたってどうせ俺なんか、趣味の草サッカー止まりだよ。」

 

「やってみないとわかんないじゃん。」

 

「やらなくてもわかることはあるんだよ。夢とか言って無理なことにいつまでもしがみついてたら、人生棒に振るってやつじゃねえの。」

 

鈴は川畑の顔を見つめた。

 

そしてうつむいてダメ出しした。

 

「川畑のそういうところ、ダメだと思う。」

 

川畑は少し黙っていたがやがて口を開いた。

 

「何その上から目線。上田にはかんけーねーだろ。」

 

鈴は思いがうまく伝わらなくてまたうつむいた。

 

その時目に入った腕時計の時間は6時を過ぎようとしていた。

 

たーたんとの約束(たーたんの一方的な、ではあるが)を過ぎている。

 

鈴が席を立たないまま、時間は過ぎていった。

 

(鈴のやつ、俺に黙ってどこ行ったんだ?こんな時間まで・・・書置きも連絡もなしで・・・)

 

誘われたり襲われたり、敦の心配はどこまでも膨らんで敦を焦らせる。

 

(や、あいつは意外とそういうことはしっかりしてる。大丈夫だ。でも、いや、でも・・・)

 

そうして壁の時計が6時を指すころ、玄関の扉がガチャリと開いた。

 

「・・・ただいま、何してんの。」

 

鈴の前には玄関で寝そべった状態の無残な敦が転がっていた。

 

「や・・・おまえが遅・・・おい!」

 

敦のお小言に耳を貸さず鈴はずんずんと家に入ってベランダの扉を開けた。

 

「やっぱり洗濯ものとりこんでない。」

 

「こんな時間までどこ行っ・・」

 

「部屋干しし直さなきゃ。手伝いなさいよ、ホラ。・・・っとにたーたんは、私がいないとダメなんだから。」

 

その言葉を聞いて敦は思わずへらっと笑った。

 

「俺だってがんばってるじゃないかあ。」

 

「ちょっと・・・タオルは重ならないように広げて干して!何度教えたらわかるのよ。」

 

「・・・すんません・・・」

 

一つや二つ、でも言わなきゃならないことが・・・あります。

 

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